茅場町の心療内科・精神科 茅場町メンタルクリニック

自分の投影について

~心理学用語でいうところの「投影」・
人はそれぞれ、同じものを見ても感じたり考えたりすることが違う~

上記を考察するにあたり、わかりやすい例をあげてみますね。
登場人物は、Aさん、Bさん、X先輩。そして最後にBさんのことを考えてみます。

さて、ある職場で、X先輩をめぐり、
・Aさんは「意見がはっきりしていて皆をまとめる力のある先輩だ」と感じており、
・Bさんは「人の気持ちをあまり考えずに自分の意見ばかり言う先輩だ」と感じている場合があるとします。
このあと、X-Aの関係、X-Bの関係が、どのように進んでいくか、ありそうなパターンを書いてみました。ある会議で、明日からの業務分担や今回のクライアントの要望への対応などを話し合いました。
・Aさんは「X先輩が意見を言った後は、会議もササっと進んで目標もさっと決まるし、やっぱX先輩かっこいーい」などなど、、そして、明日から始まるプロジェクトに向けてスヤスヤと入眠。
・Bさんは「もっと新入社員の意見も積極的に聞いてあげるべきよ。会議に呼ばれてない現場の人だって、もっと言いたいことがあったはず。X先輩はちっともみんなの気持ちをわかっていない。」などなど、、そして、いらいら・もやもやが募ったまま。
≪X先輩がどんな方かはよくわかりません、あえて設定していません。X先輩の意見が正しいか否かについても結論はわかりません。少なくとも、X先輩はみんなにとっての完璧な人とは絶対になりえません≫
そしてこの後、
・Aさんは、X先輩から依頼された仕事を従順にこなしていき楽しみながらこの状況に適応していけるでしょう。
・しかし、Bさんはどうでしょう。もやもやを抱えたままではそのうち我慢も限界にきてしまいそう。仕事を楽しんでするなんてとんでもないでしょう。おそらくそのうちに転職を考えるか、心身になにかしらの症状が出てきてしまうかもしれません。

以上、ここまでで、Bさんの「投影」という現象について考えてみます。
文章中に、完璧な人と書きました。Xさんは、だれが何と言おうとXさんであって、だれの所有物でもない。なのに、どうして称賛する人もいれば、批判する人もいるのか。
実は、これこそまさに、文頭に書いた、
~人はそれぞれ、同じものを見ても感じたり考えたりすることが違います~
に繋がってくることなのです。
このもやもやを抱えてしまっているBさん。Bさんは、そもそもX先輩に何を「投影」していたのでしょう。(つまり、何を期待していたのか、どう振舞ってほしかったのか)
この場合大切なのは、あくまでも、Bさんが一方的にX先輩に期待していたものがあり、それがかなわなかったのでBさんはいらいら・もやもやを抱えているのであって、単にBさんが、X先輩のやり方を気に入らなかったわけです。
見方を変えると、BさんはX先輩の人格(性格、考え、意思など)を無視しているともいえるのです

「投影」というのは、自分の中にある何か(不安や恐怖、いらいらさせられるもの)を、相手(対象)に映し出し、あたかもその対象がそうであるかのように見える、という現象ともいえます。
Bさんがいらいら・もやもやさせられているのは、X先輩の言動ではなく、過去に起きたもっと別の事象や対象なのかもしれません。それを解消しないまま今に至ることで、目にするすべての物に対して、ほかの人に比べて常に不安が強かったり、信じられなかったり、いらいらしやすいのかもしれません。
こういう状態を放っておき、自分のケアをしないままでいると、これから先に起こることや会う人に対して良い印象を持つことができず、トラブルになりやすく、傷つき悩みやすくなるでしょう。
うつ状態で来院される方の中には、自分でも気が付かないうつに、この「投影」を客観視できていない場合がわりと多いものです。