茅場町の心療内科・精神科 茅場町メンタルクリニック

~自己効力感~

最近、一般的にも耳にする言葉で『自己愛』という言葉があります。『自己愛』というのは、(この世)社会や周囲の人々から自分がどれだけ愛されている存在であるかを感じていて、自分の存在は所属している社会に許されているか、皆に批判されずに守られているか、という感覚のことで、人間の心理発達段階の初期に形成されるとされ、生きていく上(精神生活上の生命維持)で欠かせないものです。
『自己愛』は、『自己効力感』とは、少し定義の解釈に注意点があると感じています。
『自己愛』が欠如すると、「どうせ自分はこの世に(この家に、この学校に、この会社に)必要のない人間だ」 とか「誰も自分のことを認めてくれない」などと感じるようになり、仲間を求めに外に出ていく勇気に欠けたり、少しのことで傷つきやすい性格になったり、気持ちの主張を控えて自分で自分のことを抑圧していくこととなりやすいでしょう。自分は無条件(成績が良いからとか、肩書があるからとか、容姿端麗だからなどの条件付きでは無いこと)に愛されている存在だと自分で感じることができないと、常にこの世の中で生きづらい感覚に陥ることが多くなってくるでしょう。
上記のように、生きていくうえで基本的で大切な感覚である一方で、もしその『自己愛』が否んでいると、独りよがりで「自分は正しく、相手は間違っている。だって自分の方が優れているから」はたまた「自分がよければ、相手のことなど関係ない」「(他人を見下し)自分がいるからこそ、この組織はすべてうまくやれている」などという偏った感覚になってしまう心配も出てきます。『自己愛』が健全に機能するためには、周囲の意見を聞く力、共感性、社会性、客観性、物事がうまく進まないときの(他罰ではなく)自己内省力、統合力、自己統率力、が伴っていることが必要で、『偏った自己愛』が暴走すれば組織の中でトラブルメーカーと評価され、結果的に自分が孤立して苦悩することとなるでしょう。
さて、『自己効力感』とは、発達段階のもう少し後で養われるとされ、主に、学習効果や成功体験の分野で使用されることが多いようです。上記で述べた、周囲の意見を聞く力、共感性、社会性、客観性、内省力、統合力、自己統率力、などの、発達段階での社会的要素が土台にあるステージで生きてくる言葉だと思います
言葉の解釈はそれほど難しくなく、具体的には例えば「過去に○○マラソンで完走したことがあるから、きっとこの調子でホノルルマラソンも完走できる(と信じて頑張る)」とか、「○○さんが筋トレで若返ったのだから、見習って行えばきっと自分にだってできる、心がけてみよう」とか、「精一杯努力してきたのだから、今年の成果は去年よりも出来が良いこと間違いなし」などでしょうか。
我々の中には、多かれ少なかれこのような『自己効力感』があるのです。最初の目標はより日常的な小さなもの(どんな場面でも周囲に流されず相手の良いところに気づいたら褒めるとか、目に良くないならスマホは一日に一時間に抑えるとか、腹筋を軽くでもよいので毎日30回するとか..)でも良いでしょう。それでも少しずつ自分なりに成功体験を積み重ねていくことで自然に自信がつき、その積み重ねにより少しずつでも確実にハッピーライフになっていくことと思います。新年2020年、のちに振り返った時に、「あの頃は、○○を達成したなあ~」と振り返り、自分のことを自分で認めてあげられる一年にできたらいいなと思います。